みなさんはチョコレートの原料となる、カカオの樹から採れる「カカオの実」をご存知でしょうか。
そのカカオの樹を世界で比較的早い時期から栽培しているのがフィリピンなんです。
しかし、フィリピンのカカオ農家は立場が弱く公正な価格で取引きできていない状況にあります。
貧しいフィリピンのカカオ農家を救えるのは、シングルオリジンの「ビーントゥーバー」のチョコレートです。

この記事を書いている私は、フィリピンのダバオ市にあるカカオ農園を訪れています。
※記事は3分ほどで読み終わります。この記事を読んでいただいている方だけに、特別にお伝えする、「ビジネスチャンス」につながることも書いていますので、起業したい方、実業家の方にもぜひご覧いただけたら嬉しいです。
イントロダクション

2019年の11月にフィリピンのカカオ農園を訪れ、カカオの樹の栽培からチョコレートまで一貫して生産している、「ビーントゥーバー」のファクトリーを目の当たりにし、興味をもつようになりました。
そこで、フィリピンでのカカオの歴史や、地元の人の食習慣などをいろいろと調べていくうちに、
チョコレートの原料であるカカオの豆が、国内ではチョコレートとしての流通量は少なく、カカオ農家のほとんどがカカオ豆を加工後、流通業者に安価で卸している現状を知りました。
その理由は高品質なチョコレートをつくるのに必要な、カカオ豆を「発酵」「乾燥」させる知識、技術に乏しく、またたとえ、高い水準のカカオの加工技術をもっていたとしても、仲介業者が安い買取金額の農家のカカオを選んでしまい、需要がなく市場に出回らないのです。
ある国の歴史では貨幣としても使われるほど価値のあるカカオが、例えていうと、「ダイヤモンドの原石を磨かないまま市場に流れてしまっている状況」といっても過言ではありません。
このことが非常にもったいなく感じ、このブログを公開することでいろんな方にフィリピンのカカオ事情を知ってもらい、
はたまたフィリピンのカカオの豆で「ビーントゥーバー」をやりたいなんて人が現われ、ビジネスによって生計もままならない農家が潤っていくのではないかと思ったのが、この記事を書いた動機です。
まずはこの記事を読みすすめるのに知っていただきたい、カカオの樹からチョコレートの原料となる、「乾燥カカオ豆」になるまでの過程を下記で説明します。
カカオの樹から乾燥カカオ豆として出荷するまでの工程

1、カカオの実の収穫→2、実(パルプ)を取り出す→3、発酵→4、乾燥→5、出荷
という工程になり順番にみていきましょう。
1、カカオの樹からカカオポッド収穫する
カカオポッドとは、フットボールのような形をしたカカオの実のことをいう。
果皮は硬く1cm以上の厚みがある。

2、カカオボットからパルプ(果肉)と一緒にカカオ豆を取り出す。
パルプ:パルプとはカカオ豆を覆っている白い粘着質の果肉で、カカオポッドの中に、約20~40粒入っている。

味はマンゴスチンと呼ばれるフルーツに似ていて、甘くて酸味がある。
カカオ豆:チョコレートの原材料となり、パルプに覆われている。
3、発酵
カカオ豆をパルプごと木箱の中にいれ、バナナの葉で覆い5~6日間ほどの期間をかけて発酵させる。バナナの葉にいるバクテリアが発酵を促す。


4、乾燥
発酵後、数日間天日干しをし乾燥させる。中に含まれる水分レベルを7%未満に減少させる。そのことにより発酵が止まる。


5、出荷
袋に詰め出荷する。

カカオ豆を「発酵」、「乾燥」した「乾燥カカオ豆」の状態で出荷するのが最も多く、農家によってはパルプ(生豆)の状態で流通業者に出荷している。
「乾燥カカオ豆」から「チョコレート」になるまでは、さらに乾燥カカオ豆をすりつぶしペースト状にしたモノに、ココアバターと砂糖と香料を混ぜるという工程となります。詳しくは別の記事で紹介します。

こちらも記事を読みすすめていくのに必要な知識となりますので、目を通していただきたい項目です。
フィリピンでは16世紀末よりスペインの植民地時代にプランテーションが造営され、カカオのプランテーションとしては世界でも比較的早い段階から栽培に着手をしました。
フィリピンでは、カカオ豆をすりつぶし円筒状のタブレット状にした「タブレア」という食品が市場に多くでまわっていて、お湯でとかしてホットチョコレートにして飲んだり、お粥にホットチョコレートをかけて食べる習慣があります。

カカオ栽培の歴史が比較的長いため、人々の生活にカカオとチョコレートの文化が根づいているのです。
フィリピンのカカオ農園の現状

カカオ生産の概況
フィリピン全土における2015年のカカオ豆生産は約6,000トン。
そのうちミンダナオ島の生産量は5,463トンでフィリピン全土の約91%を算出しています。
私が訪れたカカオ農園はミンダナオ島のミンダナオ市にあり、ミンダナオ市はミンダナオ島のカカオ豆産出量の90%を生産しています。

ミンダナオ市は首都マニラから飛行機で南東に1時間40分飛んだところにあります。
ミンダナオ産カカオ豆の主要な出荷先
主要な出荷先は、
- 1、輸出用として出荷されるのが70%
- 2、タブレア用に19%が出荷される
- 3、国内のチョコレート、ココアパウダー用として11%が流通される
1、輸出用として出荷されるのが70%
農家が個別に出荷するばあい、輸出業者に直接販売することはなく、流通業者を介します。
2、タブレア用に19%が出荷される
農家自身でタブレアを製造しタブレア業者に卸すか、直接小売店に出荷します。
3、国内のチョコレート、ココアパウダー用として11%が流通される
国内チョコレート製造業者、ビーントゥーバー、国内のショッピングセンター、に卸したり小売店で販売します。
カカオ農家の経営状況
フィリピンのカカオ農家の多くが小規模で家族経営をしています。
十分な収入を得ていないため、後継者も少なく経営を存続するのも難しい農家も多いということです。
フィリピンのカカオ農家が十分な収入を得ていない3つの理由

輸出や国内のチョコレート、ココアパウダーとして81%の流通があるのに、なぜフィリピンの農家は貧しいのでしょう。
主な理由は3つあり、下記で解説していきます。
- 1、低い生産性
- 2、細分化した生産・販売
- 3、未熟な収穫後の処理技術
1、低い生産性
フィリピンのカカオ豆の生産性は450~500㎏/ha程度で、世界の平均値800~1,000㎏/haに及びません。
生産量が低い理由は、近代的な農業技術を利用していないのが原因です。
フィリピンのカカオ生産農家の多くが高齢者で、家族ぐるみの小規模農園のなか、多くの農家はこれまで慣れ親しんできた伝統的な農業を変えようという傾向に無いのです。
また農業技術に投資する資金面に関しても、政府の不完全な農地改革事業のため、農家が土地の権利を得られず、そのため融資も受けられず、近代的な農業技術に投資するための資金不足に陥っているのです。
2、細分化した生産・販売
フィリピンでは共同組合化によりマーケティングでの取引費用を軽減する努力を試みています。
しかし、協同組合の会員になっていても、農家は高い買取価格を提示した業者を見つけると組合ではなく、安易に買取業者に販売してしまうのです。
その結果、本来、農民の組織化によって取扱量を増やしたり、品質向上を図ったりする協同組合の存在意義がなくなっているのです。
3、未熟な収穫後の処理技術
豆の品質を維持するためには、適切な「発酵」と「乾燥」の作業が必要となります。それによりカカオ豆の販売価格が、パルプ(生豆)の販売価格を上回るのです。
しかし、収穫後の「発酵」と「乾燥」をする設備に投資するのが資金的に難かしいため、パルプ(生豆)で買取業者に安価に卸してしまうのです。
以上3つの点をまとめると
ということでフィリピンのカカオ農家の状況は、今、まさに貧しいがゆえに蓄えがなく、融資も受けられず、そのため近代的技術の習得や、設備投資ができずに、一向に良い方向にいかないという負のスパイラルに陥っているのです。
行政のビジョンはどうなのか
[ダバオ地域開発計画2017-2022]によると、
ダバオ市に住む零歳企業や、零歳農民、先住民族たちが、世界的に競争力のある高品質のチョコレートを作ることで、カカオやチョコレート産業の重要なプレイヤーとなることを目指している。
ということで、いちおう行政が農家の問題を改善はしたく、取り組んではいるようですが時間はかかりそうです。
そこで私はシングルオリジンの「ビーントゥーバー」が貧しいフィリピンのカカオ農家を救うと考えています。
シングルオリジンの「ビーントゥーバー」がフィリピンのカカオ農家を救う

まずは、ビーントゥーバーとは何かを説明します。
ビーントゥーバーとは
ビーントゥーバー( Bean to bar )はカカオ豆(Bean)を仕入れて、焙煎、すりつぶし、板チョコ(Bar)までの全行程の製造を一つの工房で手がけるチョコレート製造のスタイルです。
ビーントゥーバーの工房では主に単一生産(シングルオリジン)のカカオ豆を需要とされています。
それは工房のオーナーが品質の高いチョコレートをつくるため、カカオ生産者や産地名が特定された個性的なカカオ豆を好むためです。
通常の大量生産のチョコレートのカカオには、複数の産地で収穫されたカカオ豆を混合していて、品質は中程度で安価なカカオ豆を使用しています。
以下ではシングルオリジンのビーントゥーバーが、貧しいカカオ農家を支援し成功している企業、「Dari-K(ダリケー)の例を挙げながら説明していきます。
企業が貧しいカカオ農家を支援し成功した事例
ビーントゥーバーで生産したいチョコレート加工者である企業が、以下の3つのことを実施することにより、生計がままならない農家を救うことにつながります。
以上の3つを実施することによる効果は、
このことで、生産者、チョコレートの加工者、消費者、3者全てがWin-Win-Winの体制を構築できるということです。
このトリプルWinを実現しているのがDari-K(ダリケー)という、京都市に本社があり、カカオ豆の輸入・卸、チョコレートの製造・販売などを行っている企業です。
Dari-K(ダリケー)の取り組み
Dari-Kはインドネシアのカカオ農家と直接取引をし、自社でビーントゥーバーのチョコレートをつくり、国内の大手デパートで販売し成功しています。
カカオ豆の販売には中間に買取業者をはさむため、途上国の立場の弱い農家は公正な価格で取引できないことがあります。
Dari-Kは仲介業者を介さず契約農家と直接取引を行うため、中間マージンを廃し、その分、高品質のカカオを生産する農家に通常の2~3割高い価格で買い取っているのです。
このようにチョコレートを加工する企業が直接農家へ技術指導をし、品質の高いカカオを生産するようになれば、農家はそれだけの対価が得られ、また生産することのモチベーションも高めることができます。
さらに生産者、チョコレートの加工者、消費者、3者全てがWin-Win-Winの体制になり社会貢献にもつながるのです。
以上で、「シングルオリジンの”ビーントゥーバー”がフィリピンのカカオ農家を助ける」ことがわかっていただけたでしょうか。
次回は私がフィリピン・ダバオのカカオ農園を訪れたときのことをお伝えしていきます。
次の記事>>【フィリピン】シングルオリジンの「ビーントゥーバー」のカカオ農園を訪れる
フィリピン・カカオ農園ツアーに関しての記事
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参照:JICA「フィリピン国ミンダナオにおけるカカオ生産性向上ならびに高付加価値化に関する案件化調査 業務完了報告書」
参照:世界カカオ紀行② 〜カカオ文化が息づく島、フィリピン〜
参照:高城 剛著「green been to bar CHOCOLATE 世界で一番おいしいチョコレートの作り方」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
また次回お会いしましょう。
でわっ!
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